坂 村 真  民  の  世  界

よ う こ そ タ ン ポ ポ 堂 ヘ(最終更新2003.5.24)

   (北海道・富良野町山部自然公園の桜(後ろは芦別岳)・2003年5月12日撮影)

 

1.詩 国 6 月 号 2. タ ン ポ ポ 堂 か ら 
3.朴庵(ほうあん)例会のご案内 4.坂村真民全著作一覧 
5.詩国バックナンバー 6.タンポポ堂ライブラリー           (桜いろいろ)
7.作成者からのご挨拶 8.坂村真民関連HPリンク集
9.メッセージボード  

     あなたは  人目の来訪者です。 


坂村真民さんの略歴

明治42年1月6日  熊本県に生まれる。8歳の時に、父親

の急逝によりどん底の生活に落ちる。5人兄弟の長男とし

て母親を助け、幾多の困難と立ち向かう。昭和6年 神宮皇

学館(現皇學館大學)を卒業。25歳の時、朝鮮にて教職につ

き、36歳全州師範学校勤務中に終戦を迎える。昭和21年

から愛媛県で高校の国語教師を勤め、65歳で退職、以後詩

作に専念する。始めは短歌を志し、昭和12年『与謝野寛

評伝』を著している。四国に移住後,一遍上人の信仰に随

順して仏教精神を基調とした詩の創作に転じる。昭和37年、

月刊詩誌「詩国」を創刊、以後毎月、一回も休むことなく発

刊し1200部を無償で配布している。また詩の愛好者によっ

て建てられる真民詩碑は日本全国47都道府県に分布し、

その数は現在,海外の20基と合わせると約657基となる。

主な著書は、4.「坂村真民全著作一覧」に載せてます。

(南股小学校の除幕式にて(12.9.16撮影)

                                                                


1.詩 国  6 月 号 第 四 十 二 巻 6 月 号
             

                                                                         母 よ

伊予(愛媛)のひと
芭蕉の母を知る
道元禅師の母
伊子(いこ)を知る
母の恩を忘れるな
私の母は二人ある
産んで下さった母と
大詩母さまとして
拝んでいる
杉村春苔尼先生
ああ
母よ母よと
大きな息をして
大海を泳ぐ
海の王者の
鯨(くじら)よ

義 仲 寺

亡(な)きがらは
義仲寺(ぎちゅうじ)にと
遺言(ゆいごん)して
この世を去った
芭蕉の心が
急に昏倒(こんとう)して
動けなくなった時
わかった
義仲寺に
お参りしたいけれど
老いの身
もう
どうすることもできぬ

 芭  蕉

わたしは思う
日本文学
最高の人は
芭蕉であると
日本が好きなのも
芭蕉あってのことである

 翁とわたし

倒れて
足腰が駄目になり
一と月も寝ていると
夢は枯野を
かけ廻(めぐ)る
という
境地になる
でも翁は五十一歳
わたしは九十四歳

 鳥になれ

鳥になれ
鳥になれ
酉(とり)年生まれの
真民よ
鳥になれ
鳥になれ
鳥には
国境など
ないのだ
星野道夫の
本に出てくる
ワタリガラスよ
わたしのために
いつか
渡って来て
くれないか

 一 対 一

一対一
それでよいのだ
杉村春苔尼先生と
真民
一対一
それでよい
禅宗では
一箇半箇の打出と言うが
それが信仰
それが宗教
多くを望むな

 草 も ち

まだ雪の残っている
野に出て
よもぎを摘み
夫婦で搗いて
こしらえられた
岩手県は
胆沢(いざわ)の
大きな草もち
詩縁の
ありがたさよ
これで病気も
退散し
元気になります
ありがとう
ございました

 と り 年

とり年に
生まれてよかった
淋しく思わないでください
いつでも飛んでいきますよ
人間たちよ
こんどは
鳥になろうではないか
宇宙和楽の
空飛ぶ鳥に

 深 夜 の こ え

ものが言えない
ものが食べられない
深夜の妻の声が
ふすま越しに
聞こえてくる
何を言いたいのだろう
心のなかでは
いろいろのことで
いっぱいだろう
それがたまりたまって
あんな声になるのだろう
わたしは
ただ祈るだけ
どうすることもできない

 朴 の 花

まだ五月にならないのに
朴(ほお)の花を
二輪頂いた
大きな葉っぱに
大きな花
五月の天地に咲く
朴の花は
われら朴族にとっては
何よりの喜びを
与えてくれる
地球上に一本でも多く
朴を植えようと
朴の会を結んでいるが
幻(まぼろし)の瑞鳥
鳳(ほう)も
飛んでくるだろう
戦争などする
野蛮な人間たちよ
自然が示す
朴の花言葉
誠実な友情を
神託とせよ

 仏  法

仏法とは
涼しい風である
石鎚(いしづち)の山に住む
鬼(山のぬし)の子たちが
朴の大きな広葉を
うちわにして
涼しいなあ
と言う
あれが
仏法である

 芭 蕉 賛

日本に
芭蕉という人がいるから
わたしは
日本を賛美する
日本に生まれたことが
ありがたい
最も好きな句を
四つ挙げよう

 この道や行く人なしに秋の暮

 この秋は何で年よる雲に鳥

 秋深き隣は何をする人ぞ

 旅に病(やん)で夢は枯野をかけ廻(めぐ)る

 涼 し さ

 春は花
 夏ほととぎす
 秋は月
 冬雪さえて
 すずしかりけり

これは道元禅師のお歌

仏教は
涼しい風である
涼しい人
それが仏身である
しんみんよ
涼しい人になれ

 母 の 夢

悲しい母の夢をみる
母を悲しませるな
女の一生というものは
悲しいものだ
苦に満ちているものだ
特に夫を早く亡くした女の一生は
苦しく悲しいものだ
道元禅師の母伊子(いこ)も
そうだった
母ありて道元がある
母ありて芭蕉がある
母ありて真民がある

                   後        記
                           
            1 人はそれぞれの宇宙を持て

 倒れたのは試練であった。得難い試練であった。
 
 詩はわたしにとっては、生きるための信仰である。
 
 人はそれぞれ自分の信仰を持たねばならぬ。
 
 宗教ではない。信仰である。信念と言ってもよい。
 
 倒れて、自分の体が自分の体でないまでになった時、宇宙というものが出現した。
 
 それまでは、本当の宇宙をつかんでいなかった。
 
 脱落し、無になり、やっと本当の宇宙が出現した。
 
 二階を自分の書斎にし、一人で寝起きしていたが、昏倒してから階段があがれなくなり、下に移り、もう

長年階下で臥床している妻と、ふすまをへだてて過ごすようになって、 わたしの宇宙観が変った。
 
 わたしの詩も変わってゆくだろう。

                2  体   験

 体験は大事だ。でもいろんな体験をしたから、偉くなるのではない。体験をどう生かすか。それも世のため、

人のため、どう生かすか、それは信仰につながってくるので、難しくなる。近ごろやさしい人が少なくなった。

車椅子の人間になり、人の世話になり、生きているので、やさしいひとに接すると、神さま、仏さまのような

気がして、生きていることの喜びに、感鮒でいっぱいになる。

                3 続 け る

 なんでもいい。続けることだ。わたくしは長男であるが、父の死にめに会えなかったので、母が父の、のどほとけ

にお水をあげるよう、言いつけた。それで朝早く起き、水をくみに行き、のどほとけに供えた。それがもとになり、

「詩国」を付さん賦算(ふさん)し出した時も、今日まで続ける原因になっている。日記を続けて、七百七十九冊

になっているが、これも今は私の何よりの記念と言えよう。

 何でもいい、朝早く起きて日の出の光を吸う、そんなことを続けるのも、いいと思う。おすすめしたいものである。

                4 生 き て い る 

 詩にしろ、絵にしろ、生きているということが大切である。すべて作品は生きていなければならない。生きている

というのは、作者の生命があふれていることである。下手でもいい、生命がビンビンしていればいい。特に字は、

そうである。中川一政さんの字は、特に生さている。

 一字でいい
 
 生きている字を
 
 書きたい。

                5  本    腰

 本気・本腰・本物、と私は半切によく書くが、一番大切なのは本腰である。腰の字は、にくづきへんにかなめと

書くが、かなめはもっとも大切なところという字である。
 
 昏倒して腰がやられ、苦労したので、本当によくわかった。まだ完全には良くならないが、針の治療を受けて

感謝している。

 相撲で一番大事なのは、腰である。車時代となって、日本の相撲も駄目になった。

                6 星 野 道 夫 の 宇 宙 展

 「星野道夫の宇宙」展が開催されています。東京会場松屋銀座は五月五日で終わりましたが、横浜会場高島屋、

大阪会場高島屋、長野会場東急、京林会場大丸、神戸会場大丸、千葉会場市川市文化会館で開催されます。

一人でも多くの人が、観てください。私は東京会場での初日の日、観に行ったという方から図録を頂き大切にして

座右に置いていますが、もう二度とこんな方は、生まれてはこないだろうと思われます。命がけでとられた写真です。

わたしは文章に心ひかれ愛読しましたが、写真もすごいと思います。日本の誇りとする人です。ビデオも発売され

ています。生の声、生の姿が、見られます。

                7 お 礼 状 と し て

 昏倒してから「詩国」五月号をお送りし、皆さんに御心配をおかけ致しました。たくさんの方から御見舞いの

お手紙頂き、心からお礼を申します。おかげで、殆ど痛みはとれましたので御休心くださいませ。よい試練でした。

                8  前 月 号 か ら 

   一位「身心脱落」。 二位「鑑真和上展」。 三位「ふすまをへだてて」。 四位「身心脱落の人」。

 五位「光」でした。

      詩 国  ト ッ プ ペ ー ジ へ

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